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大阪地方裁判所 昭和42年(借チ)47号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕先ず、本件借地条件変更後の存続期間について考えるに、本件賃貸借契約の期間は、本件土地賃貸借契約には借地権の存続期間について定めがないから、借地法第二条第一項により昭和二二年九月から三〇年間で、残存期間は約九年であるが、堅固の建物所有目的の借地権存続期間は少くとも三〇年以上でなければならないこと、前記のような附近の土地の利用状況から考えて、本件土地には、通常鉄筋コンクリート造三、四階建の建物を建築して利用するのが相当と認められ、右建物の経済的耐用年数は四五年であること、その他当事者双方の利害得失や諸般の事情を考慮し、存続期間を四五年とし、その期間の始期は、堅固の建物を新に建築所有することを予定して借地条件の変更の裁判をする以上、この裁判確定の日から起算するのを相当と考え、借地権の存続期間については、この裁判確定の日から四五年間に変更することとする。<中略>

次に、右借地権の存続期間を変更することを前提として、財産上の給付を命ずる必要があるか否かを検討するに、本件借地条件変更に伴い、申立人は本件土地に堅固の建物を建築することができるようになり、借地権の存続期間も延長されて借地権の価値が増加し、したがつて申立人は堅固の建物所有を目的とする借地権価額から非堅固の建物所有を目的とする借地権価額を差引いたものを利得するに反して、相手方は建物の朽廃による借地権の消滅を期待し得ず、又建物の買取請求に応ずるには大なる資力を要するから期間満了による借地権の消滅を期待することは事実上極めて困難となること、ひいては土地所有権の処分価値の減少、底地価額の低下という不利益をうけるから、両者のこの利害得失を調整するため、申立人に対し相当額の財産上の給付を命ずべきものと考える。

そして、財産上の給付額について考えるに、借地条件変更を相当とするに至つた事情の変化に対して、申立人が特別に寄与したことの認められない本件においては、本件借地条件変更による借地権価額の増加額を全額賃貸人たる相手方に還元することが必要であり、かつ、十分であるものと考える。

鑑定委員会は、本件土地につき、非堅固の建物所有を目的とする借地権価額は更地価額の五割とみていること(当裁判所も本件土地につきこれを相当と考える)、前記認定のとおり、附近には大部分堅固の建物が建築されており、本件土地の通常の利用方法としては鉄筋コンクリート造三、四階建の建物を建てるのを相当と認められること、右通常の利用方法から考えて借地権の存続期間を四五年間とするのが相当であること、その他本件にあらわれた諸般の事情を考慮すると、本件土地の堅固の建物所有を目的とする借地権価額は更地価額の六割が相当であると判定する。

そうだとすると、右堅固の建物所有を目的とする借地権価額と非堅固の建物所有を目的とする借地権価額との差額である本件土地の更地価額の一割が相手方に還元されるべきであり、右更地価額については鑑定委員会の意見(一平方米につき金六八、〇〇〇円)を相当と認め、これを採用し、本件土地の更地価額一二、八八四、〇〇〇円(千円未満切捨)の一割金一、二八八、四〇〇円を以つて財産上の給付額と定める。

なお、財産上の給付額についての鑑定委員会の意見は、その算定方法として、当該地域において標準とせられている一般的な非堅固建物所有目的の借地権の更新料について、堅固の建物所有を目的とする借地権に借地条件を変更することによる伸長期間内における更新料の現価を算定し、次に堅固の建物所有目的の借地権への借地条件の変更によつて生ずると見られる本件土地の利用効率の増加による割増を附加する方法により算定している。しかしながら、建物所有目的の土地賃貸借契約は、期間満了の際、更新拒絶の正当事由のない限り当然法定更新されるのであるから、賃借人はかような場合更新料を支払う必要はないから、伸長期間内の更新料の現価を賃貸人に還元するのは、将来の期間満了時における更新拒絶の正当事由が存在するものと仮定するか又は正当事由の存在を現時点において推認することになり(本件においては将来の期間満了時の正当事由の存在を推認しえない)、妥当ではなく、又前記更新料の現価に、地上建物の床面積の増加割合を基本とする土地利用効率の増加による割増を附加することは、右利用効率の増加は、主として土地賃借人の建物建築に対する資本投下によるものであるから、これを賃貸人に還元してしまうのは合理的ではない。以上のように鑑定委員会の意見はその算定方法が相当でないので、当裁判所はこれを採用しなかつた。

(滝川治男)

鑑定委員会の意見

5. 財産上の給付

¥2,462,000を相当と認める。

「財産上の給付額の判定の考え方」

非堅固なる建物の所有を目的とする賃貸借を、堅固なる建物の所有を目的とする賃貸借に借地条件を変更し、その借地期間が延長される場合における財産上の給付額については未だ確たる算定基準が打ち出されるに至つていないが、当鑑定委員会は一般的にこのような借地条件変更承諾料の算定にあたつて採られている有力な考え方のなかから

当該地域において標準とせられている一般的な非堅固建物の更新料について、堅固なる建物の所有を目的とする賃貸借への借地条件の変更による伸長期間内における更新料の現価を算定し、次に

堅固なる建物所有への借地条件の変更によつて生ずると見込まれる本件土地の利用効率の増加による割増を附加する。

という考え方で本件の給付額たる承諾料の評定を行なうこととした。

(イ) 「推算される更新料」

このような非堅固な建物所有を目的とする賃貸借にあつて、一般慣行的に標準とされる更新料は未成熟ではあるが、20年延長で借地権相当額の10%〜15%とせられている。

本件については地形・地積とも先ず格好のもので、漸次商業地化の傾向にあることを考量して15%を採用することとした。

さらに更新時期は第1回目は9年先、第2回目は29年先、第3回目は45年先にそれぞれ到来するものと期待する。

以上によつて各回の更新料額を算出すると、

(ⅰ) 更地価格

¥12,884,000(189m248@68,000)…注

(ⅱ) 借地権価格

借地権割合を更地価格の50%と判定する。即ち¥6,442,000

(ⅲ) 更新料

前述の通り借地権価額の15%相当額とする。即ち¥969,300

第1回目 ¥966,300

第2回目 ¥966,300

第3回目

{第3回目分については第2回目更新後16年の残字期間しかないので更新料の額を16/20とした。}

而しながら、上記の各回の更新料はそれぞれ将来の各更新時(即ち9年目、29年目、45年目)に支払われるものであるため、その現在価格を求めるためには割引を要する。よつて本件においては年60%の利率による複利現価を乗じて、それぞれの現価を算出するに、

と算定される

(ロ) 「借地条件の変更(堅固な建物所有への変更)による土地利用効率の増加による割増」現状は木造の弐階建物による利用に止まつているが、申立人より示されている新たに建設しようとする堅固な建物の内容は不燃構造の3階建とし、1階は貸店舖(50坪)、2階事務所兼居宅(50坪)、3階賃貸マンション(30)坪が予定されている。

これらからそれぞれの効用について比較するに、

その効用増は2.0529と計算される。

(ハ) 「財産上の給付額の決定」

以上(イ)によつて算出された複利現価と、その複利現価に(ロ)の利用効率の増加率を乗じた額を合計した額をもつて本件借地条件変更に伴ない借地人の支払う財産上の給付額とすることとし、

806,450×(1+2.0529)=¥2,462,000

と算定した。

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